なぜモンドセレクションに挑戦したのか?
モンドセレクションへの挑戦は「銘菓シャロン」の誕生がなければあり得ませんでした。
昭和44年(1969年)シャロン甘洋堂は黒石市で「甘洋堂(カンヨウドウ)」として創業します。
創業者の洋三は一生のうち一品、皆さまに愛されて名を残すような銘菓を作ろう、「一生一品」そんな思いでお菓子作りに励みます。
そんな中誕生した、手軽に持ち歩けて、手土産にも使える形のケーキ。半月型で口に入れやすく、子どもも大人も喜ぶコーヒー牛乳のような優しい味わい、名前も付けずに試験販売していました。
名前もないのにお客様の評判は上々で、「これは売れる!」と確信に変わっていきました。店舗の移転を機に甘洋堂からシャロン甘洋堂に店名を変え、まだ名前を付けていなかった商品にお店を支えてくれることへの敬意を込めて「シャロン」と名付けました。
昭和59年(1984年)の第20回全国菓子大博覧会では銘菓シャロンが内閣総理大臣賞に輝き、地元のみならず全国にその名を知られるようになりました。
平成2年(1990年)のおおわに国体(青森県大鰐町で開催)にご臨席された三笠宮寬仁親王殿下に献上すると、毎年のようにお出でになられた八甲田山の春スキーの際にもよくお召し上がりいただき、お店にとって大切な思い出の一コマとなっています。
その後も「少しでも商品の格を上げたい」と全国菓子大博覧会への出品を続けていました。「銘菓シャロン」は平成元年(1989年)に名誉無鑑査賞を受賞したほか、「黒石シューロール」など他のお菓子も受賞を重ねていました。父の「一生一品」は、もしかしたら世界でも通用するのではないか。そして、世界的な商品の品質保証と絶大な知名度を誇る「モンドセレクション」に挑戦することを心に決めます。
「モンドセレクション」の審査基準はお菓子の味や見た目だけではなく、パッケージや衛生基準、原材料、栄養成分などの情報開示など、商品にまつわるあらゆるもののクオリティに及ぶといわれています。さらに、審査は出品した中で1位・2位を決めるのではなく、出品した商品そのものへの評価であり、自分たちが商品を磨けば磨くほど上位の賞に手が届く可能性がありました。
一生一品、名前のないところから始まり、試行錯誤をして、40年以上、皆さまに愛されてきました。父の「一生一品」でトライするには最適の舞台だと思いました。
モンドレクションの舞台裏
モンドセレクションにトライする気持ちはありましたが、国内審査会ではなく、海外での審査会だったため情報といえるものが当時はありませんでした。
どうしたら、出品できるのか?
どこに出品するのか?
そもそも「シャロン」は出品できるのか?・・・
情報収集から始まりました。
申請書など全ての応募書類は英語(商品ラベル、食べ方など製品説明)、海外銀行への審査料の送金、モンドセレクション事務局への審査のための商品の輸出、海外への挑戦のハードルは高かった。
素人が翻訳家や輸出業者などを頼りに応募できるものなのか・・・
不安を抱えつつ、セミナーへ出席したり、公的支援機関の協力を仰ぎました。そして、エージェントと呼ばれる代理店と出会うことになります。
エージェントから言われたことは一言!
「商品をもっとブラッシュアップしてください。あとは私どもが請け負います。」
こうして父の一生一品の磨き上げ、ブラッシュアップ作業が始まりました。
しかし、海外への出品に不安が付きまといます。国内最高峰ともいえる内閣総理大臣賞を受賞している商品に傷をつけるわけにはいかない。
製品や自分の思いのニュアンスまで正しく英訳されるのか?
審査員である外国人の口に合わないのではないか?・・・
そこで、「シューロール」で試してみることにしました。ロールケーキなら、外国にもあるし、シュー生地で巻いているオリジナリティーもある。経験を積むことで、一つずつ問題点を修正して「銘菓シャロン」につなげていこう。
銘菓シャロンと同時に「シューロール」のブラッシュアップ作業がはじまりました。
唯一 品質向上!
はじめて出品したモンドセレクション2016では「黒石シューロール」は銀賞を受賞しました。速報のメールを見た時、スタッフともども「うぁ~」と落胆したことを思い出します。
それと同時にどこがダメなのか?
口に合わないのか?
包装やデザインがいけないのか?
食品表示に誤りがあったのか?
衛生的な問題なのか?・・・
金賞を目指して新たな挑戦の始まりでした。しかし、金賞を受賞することが目標ではなく、40年間も地域のお客様に愛され、育てていただいた商品をもっと愛され続けるためのモンドセレクションへの挑戦だったことを思い出します。
“お客様に喜んでもらえる 美味しいものにしよう”そうすれば結果はついてくる。
原材料や製法の見直し、味わいや風味の磨き上げ、工場内の衛生レベルの向上、食品表示やホームページでの情報提供・・・お客様にとってより良い品質について突き詰める毎日でした。
こうして迎えたモンドセレクション2017に「銘菓シャロン」を出品したのです。
迎えた授賞式
結果は「Gold」
名前のないところから始まり、試行錯誤をして、皆さまに愛され続けてきた父の一生一品、「銘菓シャロン」が金賞を獲った瞬間でした。父はもとより、従業員みんなで喜びました。みんなで取り組んで、みんなで勝ち取った成果だと思いました。
そして、2017年5月29日、地中海に浮かぶ島国マルタ共和国で行われる授賞式に初めて出席することになったのです。
500社以上が参加する授賞式は各国の正装またはタキシードでの参加が決まりです。1社ずつにメダル、賞状が授与され、終了までの4時間ほど会場は熱気に包まれます。
名前が呼ばれて壇上に上がるまで1、2分でしょうか、父と共に階段を1歩ずつのぼっていきます。これまでの苦労やいろんな思いがこみ上げました。
モンドセレクション会長から父と共にメダルを受け取り、記念撮影、感動的な場面でした。
ありがとうございます。
お客様へ感謝の気持ちでいっぱいでした。
名もないお菓子が地元の方に愛され続け、世界に認められた瞬間だったと思います。
モンドセレクションでの出会い
授賞式には世界各国から会社や組織の代表がたくさん参加します。タキシードやドレスに身を包みそれは、華やかな舞台なのです。
その中で一人の化粧品メーカーの女性の社長さんと出会います。私どもと同じ小さな会社の社長さんです。
少しでもいい商品をお客様に届けたい、その一心で商品を作っている。でも作っているだけでは誰もわかってくれない、そこでモンドセレクションに挑戦するようになったといいます。モンドセレクションへ挑戦するようになって商品の質が向上したし、スタッフのモチベーションも上がったといいます。
また別の会社の社長さんは、小さな会社だろうが無名な会社だろうがみんな肩を並べて授賞式に参加できる。このような機会はめったにないよと笑顔で答えてくれました。
私どもと全く同じ思いだと感じると同時に、期待を裏切らないみんなに喜ばれる美味しいお菓子を作ることが使命なんだと強く思いました。
また、モンドセレクションに出品するにあたってエージェントの方には感謝しかありません。エージェントは英訳の指示や出品等するための輸出の取次など出品に関するコーディネーター的な役割をしてくれます。モンドセレクションの受賞商品は日本の商品が多く、一部批判的なコメントもありますが、世界的に見て日本の商品レベルが高く、より良いものを作ろうとする日本のものづくりの魂のようなものを感じるとあるエージェントの方は言います。
“私たちは一生懸命作った商品を世の中に送り出すお手伝いをしているのです。一生懸命作った商品を一人でも多くの方に知っていただけたら私たちが手伝った甲斐があるというものです。”
これを聞いて、受賞を励みに、こだわりをもって、さらに磨きをかけ、お客様に喜んでいただける商品づくりにつなげていかなければと決意を新たにしました。
長くシャロン甘洋堂を愛していただいているお客様、
日々 商品改良に取り組んでくれる従業員、
いい材料を提供してくれる問屋さんや農家さん、
本当に ありがとうございます。
皆様に育てていただいてここまでなりました。
人の縁ってありがたいものだなぁとつくづく感じました。
最高金賞までの挫折の道のり
はじめて金賞をいただいた銘菓シャロンは、なめらかな食感への改良、パッケージの見直しなどもっともっとお客様に喜ばれるよう改良を重ねていました。モンドセレクションとったらますます美味しくなったねと言われることが多くなり、うちの商品はお客様に愛されて今があるんだなぁと感じ、最高金賞以外考えられなくなっていました。試作は夜中になることも・・・、しかし、結果はまたも金賞。最高金賞まで手が届きません。
何が足りないのか?シャロンは最高金賞が取れない味なのか?・・・
地域に愛された名もないお菓子は、シャロンを名乗り、そして内閣総理大臣賞をいただきました。簡単に献上することすらできない、三笠宮寬仁親王殿下に生涯愛されました。世界的な品評会モンドセレクションへのチャレンジもすることができました。
うちのお菓子はシャロンではなく、銘菓シャロン。
このまま引き下がるわけにはいかない。その一心でした。
生もののお菓子なので冷凍して配送や遠方へお持ちできるよう改良しました。また、お土産としてお持ちしても形や温度を保つような箱を作ったり、お客様本位を忘れることなく商品づくりをしていました。
そして、モンドセレクション2019を迎えたのです。
おかげさまで「最高金賞」を受賞しました。
父が創業して私で2代目、息子へモンドセレクションの舞台をそして、シャロン甘洋堂の思いのようなものを感じてもらいたくて二人でローマの授賞式へ向かいました。
ローマの美しい街並みは素晴らしかったのですが、それ以上に二人で立った授賞式は格別でした。
おいしいお菓子でみんなを笑顔に
父の作った一生一品、名もないお菓子は、全国菓子大博覧会やモンドセレクションへの挑戦を経て、皆様に愛され50年がたとうとしています。
「おいしいお菓子で みんなを笑顔に」を理念に掲げ、日々お客様の笑顔を想いお菓子作りに励んでおります。笑顔を想うお菓子作りは我々も笑顔にしてくれます。
お客様のたくさんのご愛顧と笑顔を忘れず、次の50年、さらにその先へと、世代を超えて愛されるお店となるよう「おいしいお菓子」を作り続けてまいりたいと思います。
受賞歴
銘菓シャロンは、数多くの賞を受賞しています。
昭和59年(1984年) 全国菓子大博覧会 内閣総理大臣賞(以降、受賞多数)
平成元年(1989年) 全国菓子大博覧会 名誉無鑑査賞
モンドセレクション2016 黒石シューロール 銀賞
モンドセレクション2017 銘菓シャロン 金賞
モンドセレクション2018 銘菓シャロン 金賞 (※審査報告書)
モンドセレクション2019 銘菓シャロン 最高金賞 (※審査報告書)
モンドセレクション2020 銘菓シャロン 最高金賞
モンドセレクション2020 黒石シューロール 銀賞 (※審査報告書)
モンドセレクション2021 銘菓シャロン 最高金賞 (※審査報告書)
モンドセレクション2022 銘菓シャロン 最高金賞 (※審査報告書)
モンドセレクション2023 銘菓シャロン 最高金賞&審査員賞 (※審査報告書)
モンドセレクション2024 銘菓シャロン 最高金賞 (※審査報告書)